風にキス、君にキス。
心配してくれているのだと、すぐに伝わった。
「はい。大丈夫です」
「あまり一人で抱え込み過ぎるなよ?何かあったら相談するように」
「ありがとうございます」
一人で、かぁ…
そう担任の言葉を反芻しながら、屋上でパンを頬張った。
風が涼しくて、教室よりもずっと気持ちいい。
「…記憶って、儚いな…」
思わずそう呟いていた。
日向は今どんな風に物事を感じているのだろう。
汚いことも美しいことも、幸せなことも苦しいことも全て白紙に戻った心で。
…この世界は、どう見えている?
そう問い掛けたい。
「全てを忘れられたら楽なのにな」
小さい頃から、軽く使ってきた言葉の真の重さを。
…伝えて欲しい。
教えて欲しい。