キテレポ 08-09
No.16

益子登(37)マスコノボル

この男、とにかく運が悪い。
18歳でデビュー戦を迎えた彼は、いきなり淋病と梅毒の最強タッグによるダブルパンチを受け、「風俗はブスに限る」という百戦錬磨のチャンピオンクラスの名言を残したり、尿道の炎症からくる痛みを少しでも抑えようと、おしっこを我慢しすぎて、逆に膀胱炎になったりと、運も悪ければ頭も悪いのだ。
それを象徴するような出来事が、言わずと知れた『五・一五事件』である。
元来、益子家では虫歯になった者は一人もおらず、歯を磨かなくとも何ら支障のないような、虫歯菌皆無の家系であった。しかし、あろうことか小6の5月15日に実施された歯科検診にて、益子家史上初となる虫歯が発見されたのである。最初、本人も耳を疑った。何せ今までであれば「A~CケンゼンDケンゼン…」といった具合に健全しかなかったはずが、その日は「AケンゼンBシーCケンゼンDシー…」と、AからDの間に早くも2つもの虫歯を宣告されたのだ。(まさにクーデターである。) その瞬間、彼はピンときた。(同時に下の方もピンときた。) 半年前のアレが原因に違いない…。
説明しよう!クラスメイトの恭子ちゃんにホの字であった彼は、放課後にこっそり彼女の桃色の歯ブラシを拝借して、ゴシゴシ、いや、ゴシゴシゴーシ、いや、ブリョクコーシしたのである!
余韻を楽しむ為、口をゆすがなかった事が災いしたのだ。ついていない…。(虫歯菌しかついていない…。) ただまぁ、恭子を手中(正しくは口中)に収めたのだから、嬉しい悲鳴とでも言おうか、悪くない痛みである。


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