キテレポ 08-09
No.17

長山長作(77)ナガヤマチョウサク

いまだ現役。
70代後半だからってバカにしちゃいけない。今でも十分に若い子を満足させるだけのモノは持っている。最近はどちらかというと『前』よりも『後ろ』で頑張る感じになってきてはいるが、ここぞという時には如意棒をフル稼働させて、『前7後3』の割合でとてつもない快感を味わわせるわけだから、別に問題ないし、とにかくまぁ、要するにゲイである。
戦時中はそれはもう大変だった。自らのセクシャリティがバレるような事があれば、まず間違いなく親父にボコボコにされる。男は男らしく、強く、たくましくなければならない。そんな時代である。武士道の精神とは相反する『ナヨナヨ感』など、当然受け入れられるはずがない。だから彼は自分に嘘をついて、敢えて信長をイメージした感じの言葉遣いをしたり、武蔵を意識した感じの立ち居振る舞いをして、必死に『ワイルドな男』をアピールした。しかし今思えば、信長は男色だったという話もあるし、武蔵は二刀流、つまりは両刀使いなわけだから、いずれにしても隠しきれていない…。
14歳で終戦を迎えた彼はその後、自由を求め「GO WEST!」とばかりに渡米。1970年代から80年代にかけてのディスコ~ハウスの黄金期を通過する。この頃の話は長くなるので割愛するが、とにかくパラダイス。毎日がパラダイス。これに尽きるのではないだろうか。(彼の前で「パラダイス」とか言うと「知ったような事言うな!」と一蹴されるので気を付けよう。)
現在は都内で、お得意の英語を活かした『テープ起こし』のアルバイトをしつつ、週末には必ずどこかのクラブに顔を出し、朝まではっちゃけている。キラキラの出で立ちでガンガンに踊る彼の姿を一目見るだけでいい。それだけで今の売れ線の「大丈夫。君は間違ってない。僕がそばにいる。」みたいな曲を聴く必要はなくなる。なぜかって彼のニューヨーク仕込みのダンシングには、図らずもその全て、いや、それ以上の物が詰まっているから。あのグイングインとうねる腰使いは、生(性)を謳歌するヴァイブに満ち溢れていて、彼らが歌う『肯定』とは質の違う『肯定』を語らずして語っているのだから。
さぁ、出かけよう。
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