キテレポ 08-09
No.3

矢追文治(40)ヤオイブンジ

コソ泥。
ルパンに憧れ、大泥棒になる事を決意するが、この男が盗む物と言えば大抵千円前後で買える品々。その上すぐに捕まる。
先月、自身通算28回目の服役を終え出所したが、刑務所から程近いスーパーで『ごはんですよ』や『なめ茸』等の副菜的な物を盗み、即再逮捕。末恐ろしいまでに学習能力のない男である。
『嘘つきは泥棒の始まり』という言葉があるが、小学生時代の彼のあだ名が、『ホラ吹きキャラ』から派生した『きゃらふき』であった事からも、これは非常に納得のいく言葉であると言える。
きゃらふきのつく嘘は、その大半がどうでもいい事柄であった為、当然、全くと言っていいほど相手にされなかった。彼は一度、「犬と猫どっちが好き?」という質問に「ん~、犬かにゃ」と答えたと言う。100%猫であろう。また、夏休みの思い出をスピーチした時には、「天狗に会った」などというしょうもない嘘をついてしまい、クラスのガキ大将に「だったら証拠見せてみろよ!」とどやされ、次の日、泣く泣く両親の寝室にあった真っ赤なバイブレーターを持って行き、先生に烈火の如く叱られ、没収された。という逸話もある。
なんとも憎めない男である。
世の40代男性陣よ、ユーモアを忘れることなかれ。
矢追文治は(本人は意図せずとも)身を持ってそれを表現しているのだから。
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