キテレポ 08-09
No.4

雲井五郎（27）ｸﾓｲｺﾞﾛｳ

雲井家は頑固者が多い。
中でも五郎は頭一つ抜けている。
一郎も二郎もかなり強情ではあるが、五郎ほどではない。三郎も四郎も相当意固地ではあるが、五郎ほどではない。六郎も七郎も八郎も、五郎ほどではない。
五郎ほどの頑固者はそうそういない。
幼い頃、兄弟全員が公文式を習っていたのに、五郎だけは頑なに学研をやり続けた。兄弟全員が少年ジャンプを読んでいたのに、五郎だけはコロコロコミックを読み続けた。兄弟全員がヒラメを釣っていたのに、五郎だけはカレイを釣り続けた。
それだけではない。
兄弟全員でかくれんぼをして遊んでいた時の事、みんなが「日も暮れてきたしもう帰ろう」と言うのに、一人だけ最後まで隠れ続けた。
三十分たっても、一時間たっても、全く姿を見せようとしなかった。
しびれを切らした七人は、手分けをして彼を捜したが、一向に見つからない。驚いたことに、いまだに見つからないという。
あれから十数年の月日が流れたが、彼はきっと鬼に見つからぬよう、今もどこかで身を潜めているに違いない。
雲井五郎。とにかく頑固な男である。
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表紙・目次

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