キテレポ 08-09
そして次の瞬間、急にその場にうずくまると、何やら足をさすり始めた。そう。膝に違和感を覚えたのである。
「やべぇ。これやばいやつだ。今日無理かもしんない。」
(セコンドに付く予定だった)高橋君にそう洩らすと、彼は一目散に帰路についた。しかも、万が一に備えて正門を回避して裏門に回るという完璧な立ち回り。しかし、その機転を利かした行動が裏目に出た。裏門と体育館の位置関係をしっかり把握していなかったのだ。(要するにたまにしか学校に行かないから土地勘がない。たまに行っても体育とかやらないから距離感が分からない。)
対戦相手とその仲間達にあっさりと見つかった彼は、目前に広がる光景に息を呑んだ。オーディエンスが100を越えていたのである。
「引くに引けない状況だ…。やるしかない…。」
覚悟を決めた彼は、ゆっくりと相手に近づいていき、いきなり先制パンチ(口による先制パンチ)を食らわせた。
「何が望みだぁ!」
これに対し相手は「強いて言うなら」という括弧付きで土下座を要求した。
すると彼は「何なら靴も舐めます」という補足付きでこれに応じ、冷たい土の上にひざまづくと、世界一綺麗な土下座を見せた。
それ以降、彼は週休7日制を導入し、二度と学校に来ることはなかった…。

高校時代の彼については話すことは何もない。なぜかってそれは中卒だからだ。
彼が高校進学を諦めた理由として考えられるのは、同じ中学だった奴に土下座の件をいじられるのが恐かった。という事と、仮に入学したところで卒業できないのは目に見えていた。という事だ。だから彼が言う、「高校を卒業する事よりも、早めに童貞を卒業する事のほうが就職には有利な気がした。」というのは何の理由にもならない。第一、彼が童貞を卒業したのは30を過ぎてからの事だ…。


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