キテレポ 08-09
No.8

出口香奈(14)デグチカナ

クラスのマドンナ的存在。とはいえ、ビックリするぐらいデリカシーのない残念な子である。
例えばこんな話がある。
学級長の賢治と副学級長の竜二は共に、香奈に首ったけであった。言わずもがな、二人は香奈を書記に任命した。ある日の学級会での事、教室の最前列で司会進行をする二人の後ろで、香奈は必死に屁を我慢していた。黒板に書く文字が波打ってしまう程の極限状態の中、彼女は持ち前の負けん気と精神力で何とか(首の皮一枚の所で)持ち堪えていた。しかし、この日二度目のピークを迎えた瞬間、万事休す。100dBを上回るであろう爆音が教室中にこだましたのである。場内は大爆笑に包まれ、皆口々に「誰?誰?」「前の方から聞こえたよ」などと騒ぎ立てた。この時すでに、香奈がクサイ(2つの意味で)という思いは皆一致していた。
その時である。賢治がおもむろに手を挙げ「わりー!屁ぇこいちまった(笑)」と、窮地に追い込まれていた香奈を見事に救ってみせたのだ。この一言で場内はまたも大フィーバー。これにて一件落着と相成ったのである。
竜二は悔しくて悔しくて仕方がなかった。ライバルにかっこいいところを見せられ、且つ、おいしいところまで持っていかれたのだから…当然、このまま終われるはずがなかった。
「目に物見せてやる…。」
竜二は賢治を横目に「カッメ~ムシ!カッメ~ムシ!」と、手拍子に乗せて囃し始めた。すると、次第にそのカメムシコールは一同を巻き込み、大合唱へと発展していった。
いたたまれない気持ちでいっぱいの賢治は、チラッと後ろを振り向くと、文字通り震撼した。
なんと、香奈までもがその一員となっていたのである。(さも当たり前のような顔で…。)
この夜、賢治は虹を見た。涙溢れる瞳の向こうで。

出口香奈。今風に言うなれば、まさしくDKN(デリカシーない)女である。名前からしてDKNなのだからしょうがない。いや、しょうもない。いずれにせよ、残念な子に変わりはない。
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