偽装婚約~秘密の契約~
それから、食事が始まる。
瑞季さんに教えてもらったテーブルマナーにミスはなかったはず。
そして、最後のデザートが運ばれて来る。
『頑張って下さい、沙羅様』
あたしのところへお皿を運びにきた瑞季さんが小声で囁く。
あと、少し。
あと少しでこの緊張から解かれる。
頑張れ、沙羅!
自分自身に気合いを入れ直す。
「沙羅さん?
1つ、聞いてもよろしい?」
目の前に座ったお母さんが真っ直ぐあたしを見つめる。
「ホントに、晴弥と結婚…するのかしら?
この子は、将来、世界の遊馬電器を継ぐ、男よ?
そんな男を支えるのはあなたの想像以上に大変だわ。
それでも、晴弥と結婚できる?」
世界の遊馬電器を継ぐ男。
そうだ。晴弥は…そんなすごいヤツなんだ。
あたしは真っ直ぐにお母さんを見つめ返し、言った。
「はい。
私は、全力で晴弥さんをサポートします」