偽装婚約~秘密の契約~





『よくやったな、沙羅』


リビングのソファにドカッと座るあたし。

そんなあたしに声をかけた晴弥はなぜかニヤッと笑っている。



『母さんも、親父も、沙羅が婚約者だってことになんの疑いも持ってない。

と、いうことは、うまく騙せた、ってことだ。


沙羅、夜が楽しみだな』


晴弥はそう言って自分の部屋へ入っていく。



よ、夜が楽しみってどういう意味よ?

あたしはっ!

全然っ、楽しみなんかじゃないっていうのに!



『完璧でした、沙羅様。

特に、最後の奥様の質問の答えなんかは。』


瑞季さんはそう言ってニコッと笑う。



「いやぁ…

あれは奇跡的なアドリブでしたね~」


あはは~なんて笑ってるあたし。


でも、本当に自分でもビックリするほど、完璧な答えだったんじゃないかと思う。


晴弥のお母さんの質問。


「世界の遊馬電器を継ぐ、晴弥と本当に結婚できるの?」


これに対し、あたしははっきりと言ったんだ。



「私は晴弥さんを全力でサポートします」

って。


自分でもどうしてこんな言葉がすんなりでてきたのか分からない。


ま、でもこの言葉のおかげでお母さんは納得してくれたみたいだけど。








< 107 / 295 >

この作品をシェア

pagetop