偽装婚約~秘密の契約~
『よくやったな、沙羅』
リビングのソファにドカッと座るあたし。
そんなあたしに声をかけた晴弥はなぜかニヤッと笑っている。
『母さんも、親父も、沙羅が婚約者だってことになんの疑いも持ってない。
と、いうことは、うまく騙せた、ってことだ。
沙羅、夜が楽しみだな』
晴弥はそう言って自分の部屋へ入っていく。
よ、夜が楽しみってどういう意味よ?
あたしはっ!
全然っ、楽しみなんかじゃないっていうのに!
『完璧でした、沙羅様。
特に、最後の奥様の質問の答えなんかは。』
瑞季さんはそう言ってニコッと笑う。
「いやぁ…
あれは奇跡的なアドリブでしたね~」
あはは~なんて笑ってるあたし。
でも、本当に自分でもビックリするほど、完璧な答えだったんじゃないかと思う。
晴弥のお母さんの質問。
「世界の遊馬電器を継ぐ、晴弥と本当に結婚できるの?」
これに対し、あたしははっきりと言ったんだ。
「私は晴弥さんを全力でサポートします」
って。
自分でもどうしてこんな言葉がすんなりでてきたのか分からない。
ま、でもこの言葉のおかげでお母さんは納得してくれたみたいだけど。