偽装婚約~秘密の契約~




「ちょっと外の空気吸ってきまーす」


ドレスから部屋着に着替えたあたしは瑞季さんに声をかけて、部屋を出る。



ここを真っ直ぐ行って、

この角を曲がって、

次の角を曲がって、


階段を1つ上がる。


そこにあるのは、テラス。

和風の家だけに、テラスの感じも花が生けられていて、かなり和風っぽい。


ここはあたしの憩いの場所。

2日目くらいに瑞季さんに付き添って貰って家の中を探検した。


広くて、広くて。

家の中を歩き回っただけなのにかなり疲れた。


そんなとき、この場所を見つけたんだ。


その日は満月で。

まんまるの月が、あたしを照らしていた。


それから、毎日のようにここに来て、ぼーっとするのがあたしの習慣になっている。



はぁ…

にしても、緊張しっぱなしだったなぁ…あたし。


うまく…笑えてたのかな?


今さら、不安になってきた。


そんなことを考えていると足音が聞こえて来て。

あたしの後ろで、パタッと足音が止まる。



振り返るとそこには…



「………お父さん?」



晴弥の、お父さんがいた。








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