偽装婚約~秘密の契約~
『ははっ
俺はそんなこと、気にしてないよ、沙羅さん。
だから、頭を上げてくれ』
素直に頭を上げるあたし。
『さっき、俺自身は遊馬家の決まりを気にしちゃいない、と言ったが妻は違う。
だからくれぐれも妻にはバレないようにな。
これは、俺だけの秘密にしとくから。』
お父さんは、それだけ言うと立ち上がる。
『それじゃあ、よい夜を。
俺と妻は明日の朝にはまた、この家を発つ。
次に会うのは…1ヶ月後、かな?
それまで、元気で。
おやすみ、沙羅さん』
お父さんは片手を上げ去っていく。
なんて…いい人なんだろう。
晴弥のお父さんとは思えないほど、性格が素晴らしい。
どうしたら、晴弥の性格はあんなひねくれたものになっちゃうんだろう。
そう、思うくらいお父さんは素敵な人だった。
あの人が世界の遊馬を背負っている。
そう思うと、あたしはとんでもない人物と話していたような気になった。
将来、晴弥もあんなふうに…なるのかなぁ…