偽装婚約~秘密の契約~
「だ、誰があんたのペットなのよっ!」
甘い声で囁く晴弥。
その声は信じられないほど、色っぽくて。
動揺を隠すのに必死だった。
『嬉しいくせに。
お前はホントに意地っ張りだな、沙羅』
ニヤッと笑っている晴弥が容易く想像できた。
「嬉しいワケないでしょ!
それにあたしは意地っ張りなんかじゃない!」
なんでまだ出逢って4日しか経ってないあんたにそんなこと、言われなきゃいけないワケ?!
『じゃあ、昨日のあのキスのあと俺に抱きついたのは…誰だっけ?』
……………っ!!
晴弥の腕の中で真っ赤になるあたし。
た、確かに昨日、晴弥とキスをしたあと、恥ずかしくて晴弥に抱きついたような気がするけど…っ!
でも、
でもあれは、あくまでも雰囲気のせいで。
そういうキモチは1ミリともないんだ。
『沙羅、俺疲れたから寝るな。
おやすみ、沙羅』
チュッと音をたててあたしの頬にキスをする晴弥。
そしてそのあとすぐに聞こえて来たのは
『すぅー…すぅ…』
と、いう寝息。
どうあがいても、晴弥の腕の中からは抜け出せなくて。
もう…ホントに、やめてほしい。
性格は最悪だけど、イケメンで間違いない晴弥。
そんなアイツの腕の中で寝るなんて、安心して寝られない。
絶対明日、寝不足だよぉ…