偽装婚約~秘密の契約~
『沙羅、昨日できなかったろ?
朝から熱いヤツ』
顔を上げるとニヤッと笑ったヤツがいて。
「ヤだ!
まず離してよ!
いい加減、いいでしょ?!」
そう言っているのにあたしの言葉と反対に腕に力が入る。
『そうやって意地張って。
俺が寝てる間にいくらでも抜け出せれたろ?
イヤならなんで無理矢理にでも俺の腕をどかさなかった?』
「……そ、それは…っ!」
た、確かに晴弥の言う通りだ。
晴弥が寝ている間に抜け出すことができた。
でもそれをしなかったのは
晴弥を起こしたくなかったから…
いや、それだけじゃない。
晴弥の腕の中が居心地が良かったから――……
って!
あたし、何言っちゃってるワケ?!
ヤバくない?!
頭、ヤられた?!
頭を横に振り、さっきの考えをどこかへふっ飛ばす。
……ま、でもそんなこと、できないんだけど。