偽装婚約~秘密の契約~
『で、どうしてなんだ?沙羅』
「そ、それは…」
なんて言って誤魔化せばいいんだろう。
寝てないせいで頭の回転が異常に遅い。
こんなときに限って晴弥は…っ!
『答えられないのか?沙羅。
じゃあ代わりに俺が答え、教えてやるよ』
晴弥はあたしの体を無理矢理起こす。
そして後ろから抱きしめた。
ってなんであたし…抵抗しないんだろう。
あたしの肩に顎をのせた晴弥はあの、甘い声で言った。
『沙羅、お前は俺が好きなんだ。
だから、俺から逃げなかった』
…サラ、オ前ハ俺ガ好キナンダ
…ダカラ、俺カラ逃ゲナカッタ
晴弥の言葉が頭の中をグルグルと回る。
ダメだ…洗脳されてるのかな、あたし。
あたし…晴弥のこと…
「って…んなワケないでしょー!!!」
我に返ったあたしは大声で叫んだ。
危ない。
もう少しで、完全に晴弥に洗脳されるところだった…