偽装婚約~秘密の契約~




「で、その人がどうして有名人なワケ?」


確かに着物ブランドの紫水は有名だ。

でも、この学校になら紫水と同じくらい…いや、それ以上に有名な会社の御曹司や令嬢はたくさんいるだろう。



『あずさは…絶世の美少女。

そう言われるくらい、綺麗な顔の持ち主で。


アイツを狙ってるバカ共が大勢いる。


それにあずさの良いところは顔だけじゃないんだ。

成績優秀で性格もいたって温厚、そして優しい。


唯一ダメなのは運動くらい。


それ以外ならなんでもこなす。

近々芸能界デビューなんてウワサもあるくらいだ。


いくらバカな沙羅でも分かるだろ?

あずさが有名になる理由』



「バカは余計。

なるほどね、そりゃあ有名人だ」


で、もう1人の有名人、晴弥に長門あずさが抱きついていた。

ってことは…


そこまで考えてあたしは思考を停止させた。

だって、胸がさっきより痛くなったんだ。


ぎゅって誰かに鷲づかみされたような、そんな感覚。




「ジュウゴは…その長門あずさって人と仲いいの?」


これ以上、長門あずさの話をしても自分が苦しむだけだと分かっていても聞いてしまった。

何を気にしてるんだろう、あたしってば。



『まあ…そりゃあな。』


歯切れの悪い返事をしてジュウゴは席を立つ。



『悪い。

俺、次の時間サボるから』


そう言葉を残して。









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