偽装婚約~秘密の契約~
「あ、あずさ?
どうしたの?」
心なしか芽依の声がうわずっているように聞こえた。
芽依は何を動揺しているんだろう。
「あなたは…確か、鬼灯沙羅さん、でしたよね?」
「どうしてあたしの名前を…」
なんでこの人があたしの名前、知ってるの?
「私、長門あずさって言います。
あずさって呼んでくれたら嬉しいな。
よかったら仲良くしてね?」
そう言ってあずさは右手を差し出す。
「あたしは…沙羅で」
なんとも言えないまま、その右手を握った。
芽依が驚いているのが分かる。
芽依…いったいどうしたの?
なんでそんなに…ビックリしてるの?
「晴弥に伝言、頼んでいいかな?」
あずさはそう言ってニコッと笑う。
確かに、絶世の美少女だ。
誰もが見入るような、そんな綺麗な顔。
「………え、あ、うん」
「今日は…ごめんね、って言っといてもらえる?」