偽装婚約~秘密の契約~




『お帰りなさいませ』


こんなことはきっと、初めてだろう。

あたしはいつもなら瑞季さんに


「ただいま!」

と、元気に言うのだが、今日はそのままスルー。


きっと、瑞季さんは驚いているだろう。

でも、でも、なんか分かんないけど、今日のあたしは不機嫌なのっ!



そのまま部屋へと突き進んで、

瑞季さんと一言も会話を交わさず自分の部屋へ閉じこもった。



もうホントにあたし、意味分かんない!


第一、この胸のモヤモヤってなんなの!?

それにこのイラつきもワケ分かんないし!


自分自身で自分のことがこんなにも分からないと思ったのは初めてで。


ずっと、

ずっと、

ずーっと、頭の中には晴弥にあずさが抱きついてる場面が浮かんでいて。



何!?

2人ってやっぱり…そういう関係?


でもあずさだよ?

相手は、あのあずさだよ?


確かに、並べば美男美女だけど、

でも、晴弥は性悪だ。

悪魔だ。


でも一言二言しか話してないけど、

あずさはきっと、気の優しい、天使のような子のはずだ。



そんな2人が釣り合うワケがない…!!


ってなんであたし、こんなこと一生懸命考えてるの?!








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