偽装婚約~秘密の契約~
「……そんなんじゃない」
俯くあたし。
晴弥があずさのことか?と、言ってきたとき意志に反して、心臓がドクッと大きな音をたてた。
ってことは何?
あたし…あずさのこと、気にしてるってこと?
『なんだよ?沙羅。
俺にやきもち妬いてくれてんのか?』
晴弥が近づいて来る気配。
それを感じたあたしは立ち上がった。
「なんであんたになんかっ!」
そう言い終えたときにはもう、晴弥に腕を掴まれていて。
はぁ…
もう、サイアク。
またこの悪魔から逃げ遅れた。
『意地張るなよ、沙羅』
晴弥は後ろからあたしを抱きしめる。
もうなんだか諦め半分のあたしがいて。
と、いうかもう十分、分かってたんだ。
コイツからはどう頑張っても逃げられないんだ、って。
『沙羅。
あずさとは、なんでもないんだ。
信じてくれ…』