偽装婚約~秘密の契約~
『なんて言えばいいんだよ…沙羅に』
頭を抱える俺。
こんなにクヨクヨ悩むなんて情けない。俺らしくもない。
分かってる、そんなこと。
でもときに男はとんでもなく、弱くなってしまうものなんだ。
『いつもみたいに強引にやればいいんじゃないですか?』
『できたら苦労しねぇー…』
だって沙羅、最後に言ったんだぜ?
もうあたしに近寄らないで、って。
いや、そりゃあまあ、いつもの俺なら気にしないけどさ。
でも、今回は別だ。
相手が…沙羅だから。
『では、逆に優しく接してみてはどうですか?
女性はギャップに弱いと聞いたことがあります。』
優しく…か。
俺が?
沙羅に?
優しくすんの?
『ダメ。却下。』
優しくとか、無理。
『晴弥様。
もう腹をくくってください。
正直に話すしかないと思いますよ、あずさ様のこと。
それで沙羅様が許してくれるかは分かりませんが。』
んな無責任な。
それに…あずさの話は、沙羅にはしたくないんだ。
だって…アイツを傷つけるだけかもしれないんだから。
いや、もう現に傷つけてるか。