偽装婚約~秘密の契約~
「ちょっとトイレ行ってくるね」
「迷子にならんといてや。
ここで待ってるから」
芽依のそんな言葉を受けてしっかり場所を確認しておく。
パーティールームから出てすぐにいた執事さんらしき人にトイレの場所を聞く。
『この奥の廊下を真っ直ぐ進んで突き当たりがトイレになります』
「ありがとうございます」
ニコッと笑って言われた通りに真っ直ぐ進む。
途中、大きな窓があって。
やけに明るいな、と思ったら外に池があった。
それも噴水付きの。
その池に月明かりが反射して水面がキラキラと光っていた。
パーティールームに戻る前に外に出てみよう。
そう決めてトイレに入る。
軽くお化粧を直してさっき見つけた庭に出るドアから庭へ出た。
外の空気は澄んでいて。
少しだけ寒かった。
ま、こんな肩の出たドレス着てたら当たり前なんだけど。
「…………っ…るや」
『………っ…やめ…』
噴水へ近づいていくとどこからか小声の話し声が聞こえてきて。
誰か密会でもしてるのかな?
なんて思っていた。
でも、見えたんだ。
木の陰。
月明かりに照らされた、晴弥の横顔。
そして、その隣にいたのは…あずさだった…