偽装婚約~秘密の契約~
『沙羅様。
入ってもよろしいでしょうか』
「………どうぞ」
上半身を起こし、目に当てたタオルを取った。
チラッと鏡を見るとだいぶ目の腫れはひいたようだった。
『晴弥様は先ほどお出かけになりました。
朝食を召し上がってはどうですか?』
「…………はい」
やっぱり、どんな心情であろうとお腹はすくもので。
実はさっきからお腹が鳴っていた。
瑞季さんに続いて部屋を出るとテーブルの上には
「………すごい」
息を呑むほど豪華な朝食。
『やはり気が落ち込んでいるときは食べるに限りますから』
瑞季さんはそう言ってニッと笑った。
つられてあたしも笑う。
良かった。
いつも通り、ちゃんと笑えてる。