偽装婚約~秘密の契約~
意を決したように顔を上げた晴弥。
そして、言った。
『俺とあずさは付き合ってた。
もう今じゃ、関係は終わってる。
これは本当だ。
だからこれだけは信じて欲しい』
晴弥が真剣な眼差しであたしを見つめる。
でも、あたしは目を逸らした。
『沙羅、晴弥の言ってることは本当だぞ』
そんなジュウゴの言葉が聞こえて。
小さく、縦に首を動かした。
そうしないと話が進まないと思ったから。
『俺も、あずさも、本気だった。
本気で、相手のことを想ってたんだ。
でも、俺たちは自由に恋愛していい立場じゃない。
金持ちってのはめんどくさいんだ。
あの会社の息子とは仲良くするな、とか
あの会社の娘と仲良くなっておけ、とか
自分の利益ばかりを考えた親の発言、行動。
それに俺たち子どもは振り回されてる。
ジュウゴと芽依がそのいい例だ。
サクラ商事は芽依の会社ともっと深く交流がしたがために2人を結婚させようとしてる。
2人の気持ちなんてまったく無視でな。』
芽依とジュウゴは足下に視線を向けていた。
2人とも表面上では
仕方ない、って割り切ってるけど本心はきっと違うんだ。
親の事情に振り回されてうんざり…してるんだろう。