偽装婚約~秘密の契約~
『俺は、どうしても遊馬電器を継ぎたかった。
そのためには親と縁を切るワケにはいかなかったんだ。
あずさと一緒なら何も要らない、ってさっき言ったけどさ。
俺、ウソついたかもな。
あずさより、自分の将来を取ったんだから。
俺さいて…『晴弥様』
晴弥の言葉を途中で遮ったのは瑞季さんだ。
今まで、ずっと黙っていた瑞季さん。
晴弥は
『瑞季、余計なことは言わなくてもいい』
と言って瑞季さんを睨む。
でも瑞季さんはその目を真っ直ぐに見つめ返し、言った。
『すみません、晴弥様。
ここは目を瞑ることができません。』
『………瑞季…』
はぁ…と溜め息をついた晴弥。
それをゴーサインだと受け取った瑞季さんは言った。
『今の言葉は全て、ウソです。
晴弥様はあずさ様と遊馬電器を天秤になど、かけていません。
純粋に、あずさ様を思って別れを決断したのです』
瑞季さん。
分かってたよ、そんなこと。
コイツは性悪だし、変態だし、エロだけど。
あずさを大事に思ってるキモチはあたしにだって伝わってたんだから。