偽装婚約~秘密の契約~
『晴弥様は、ほとんど一睡もせず、一晩中、考えていました。
自分がどうしたいのか。
自分がどうすればいいのか。
1番に考えたのは、自分のことじゃなく、あずさ様のことで。
あずさ様を紫水というブランドから切り離すことは簡単で。
自分は、それをしてもいいのか。
そのことで毎日、悩んでおりました。
そして、晴弥様はある日、私に突然言ったのです。
自分が、そんなことをしちゃいけない、って。
俺があずさの未来の全ての責任を負うことはできない。
自分にはまだ、そんな力はないんだ、ということを。』
ジュウゴが呟く。
『お前…なんでんなカッコイイんだよ…』
そうだよ、晴弥。
あんたはやっぱり、カッコ良すぎる。
俺があずさの未来の全ての責任を負うことはできない、って何よ?
普通、そんなこと言えないよ?
『あずさ様に終わりにしようと伝えると、あずさ様は晴弥様にすがりました。
別れたくない。
私は晴弥のことが大好きなんだ、って。
そんなあずさ様に晴弥様は心を鬼にして言ったのです。
俺はもうお前に飽きた。
最初から俺は本気じゃないんだ。
もう俺につきまとうな、と。』
あずさはこの言葉聞いてどれだけのショックを受けたんだろう。
きっと、何日も、何日も、泣き続けたんじゃないのかな。
そして、晴弥もどれだけ傷ついたことだろう。
目の前で手で顔を覆っている晴弥をどうしようもなく、抱きしめたくなった。