偽装婚約~秘密の契約~
『奥様、申し訳ございません。
お迎えにあがれず』
瑞季さんが頭を下げる。
晴弥は困ったような顔をしながら髪の毛をかきあげている。
そしてあたしはドキドキとうるさい鼓動を抑えるのに必死だった。
だってさ。
前は事前に分かってたら心の準備ができたけど。
でも、今回はいきなりすぎる。
「いいのよ、瑞季。
私たちが勝手に帰ってきたんだから」
『私たち、ってことは父さんも帰ってるんですか?』
「そうよ。
2人の婚約披露パティーをしようと思ってね。
仕事、早く切り上げて帰って来ちゃった」
そう言って晴弥のお母さんは笑う。
今、なんて言いました?
2人ノ婚約披露パティーヲシヨウト思ッテネ
って言いました?
あの、婚約披露パティーって…
いったい、どういうことですか…