偽装婚約~秘密の契約~
『笑え、沙羅。
んで堂々と歩け』
キョロキョロと辺りを見回すあたしに晴弥が小声で囁いた。
そうだ。
キョロキョロしてる場合じゃないんだ。
今からあたしは晴弥の婚約者になりきらなきゃいけない。
そこからスイッチオン。
自分でも驚くほど、堂々としていたと思う。
割れんばかりの拍手とセレブ丸出しの人々があたしを覆う。
遊馬電器…なめたもんじゃない。
想像以上だ。
晴弥はどんどん進んでいき、最後は壇の上にのぼらされた。
………あの、1つ、いいですか?
壇の上から見る景色は、格別だった。
きっと、今いるのは500人以上だ。
晴弥め。
ウソ、ついたな。
ちょうど、部屋の中央辺り。
ジュウゴと芽依が笑ってあたしたちに手を振っている。
そのおかげでだいぶ、落ち着いた。
大丈夫。
あたしは、笑ってればいいんだから。
チラッと晴弥を見る。
そうすると晴弥と目が合って。
晴弥は頷く。
その目は俺にまかせとけ、そう言っているようで。
分かった。
今日ばかりは黙っておく。
あんたに全て、まかせるよ。