偽装婚約~秘密の契約~
『えー…皆様。
本日はお忙しい中、足を運んでいただき、ありがとうございます。』
真ん中にあるマイクをとって喋り出す晴弥。
その横顔はビックリするほど堂々としていた。
ってか…ここ、照明明るすぎない?
目が痛いんですけど。
それにフラッシュたきすぎ。
撮ってもいいことなんてないのに。
500人を目の前にこんなことを考えるあたしはなかなか肝が据わっているんじゃないだろうか。
『私は今日で18になりました。
それもこれも皆様の支えがあったからこそだと思っております。
そして、私の隣にいるのは私を生涯支えてくれる大切なパートナーになる人です』
晴弥はそう言ってあたしにマイクを差し出した。
はっ?!
ちょっと待ってよ!
あたし、喋らなくていいじゃないんだっけ…?
なんて思いながらも今のあたしはあたしであってあたしじゃない。
だから、いつものあたしとは違うんだ。
半分自棄クソでマイクを受け取った。
絶対、これ終わったあとで晴弥をこらしめてやる!
「鬼灯沙羅と申します。
今後とも、晴弥共々よろしくお願いします」
ニコッと笑って見せる。
そうすると拍手が起こった。
我ながら咄嗟に考えたアドリブにしては最高のでき。
こういうときくらい、自分で自分を誉めてもバチは当たらないよね?