偽装婚約~秘密の契約~
あいさつのあとは立食パーティー。
壇から降りたあたしは晴弥の横で笑いながら招待された人へあいさつ。
頬の筋肉が硬直してきた。
『頑張れ、沙羅。
あと少しだ』
あたしの様子に気がついた晴弥が声をかけてくる。
「う、うん」
引きつった笑顔のまま頷く。
うん、今決めた。
お風呂で頬の筋肉をほぐそう。
頬の筋肉のマッサージをしよう。
明日、頬の筋肉が筋肉痛になるのは辛いからね。
……って、そもそも頬の筋肉って筋肉痛になるのか?
『遊馬電器の御曹司。
俺らにあいさつナシか?』
え?
次の人へ行こうとしていたあたしたちにそんな声が届く。
「……めぃぃぃぃ…」
芽依の顔を見たあたしは芽依へ抱きつく。
「さ、沙羅っ?!
どうしたっ?!」
抱きつかれた芽依はテンパってるがそんなのお構いなし。
『……沙羅。
やめろ。
いつ、どこで母さんが見てるか分からないんだ』
そんな晴弥の言葉で渋々芽依から離れた。
何も知らないままだったら素直に言うこと聞かないよ?
だけどさ、晴弥の決意、聞いちゃったじゃん?
そしたら、言うこと聞かないワケにはいかないって。
芽依に肩を叩かれながらテーブルのケーキをつまんだ。
もう、死ぬほどお腹すいたんだ。