偽装婚約~秘密の契約~
『冗談に決まってんだろ。
マジで泣きそうになってんじゃねぇーよ』
「別に…泣きそうになんてなってない…」
いや、実際泣きそうだった。
涙はギリギリ零れなかったけど。
『ほら、立てよ。
部屋…案内っすっから』
晴弥はぶっきらぼうにそう言って襖を開けた。
ってなんか…さっきとまた、キャラ違くない?
あたしの気のせいかな?
乱れた服装を直し、晴弥の後ろを歩く。
うわぁ…
ここの家、マジで広い。
何度目かの角を曲がり晴弥は立ち止まった。
あたし、迷子にならずにこの家…住めるワケ?
『ここ、俺らの部屋』
俺ら、って言ったところに文句を言ってやろうと思ったがやめておいた。
言い合いしてムダな体力を使いたくはない。
晴弥はドアを開ける。
「………何?ここは…」