偽装婚約~秘密の契約~
『沙羅様。
絆創膏をお持ちしました』
やっと、あいさつから開放されたあたしは廊下のイスに座っていた。
そこにどこからともなく現れたのは瑞季さんだ。
「あ、ありがとうございます」
実は結構前から靴ズレでかかとが痛かったんだ。
『沙羅様。
社長がお呼びです。
どうぞ私について来てください』
トイレで絆創膏を貼り終えて戻ってくると瑞季さんがそう言った。
晴弥のお父さんが?
なんでまた、あたしなの?
「あの…パーティーの途中なのに抜けてもいいんですか?」
多分、今日の主役はあたしと晴弥だ。
なのにあたしが抜けるってマズイんじゃない?
『あまりよくはありませんが、晴弥様がなんとでもしてくれますので。
それに社長は今じゃなきゃ沙羅様と2人きりで話ができないと言っておりましたので。』
あたしと2人きりじゃないとできない話?
それって…どういうこと?
急に緊張が襲ってきて。
『大丈夫です。
きっと、悪い話ではないと思いますので』
ニコッと笑った瑞季さんはある襖の前で止まった。
『旦那様。
沙羅様をお連れいたしました』
『どうぞ』