偽装婚約~秘密の契約~
『沙羅。お前らしくもないな。
そんなボロボロな姿になって』
要はそう言ってあたしの前に立った。
要…月島 要(ツキシマ カナメ)
月島グループ会長の孫。
まあ要のお父さんは月島グループの社長なんだけど。
要はあの高校に通っているんだが、
その以前にあたしは会ったことがあった。
今から約3年前。
まだ中3の頃。
高校受験で毎日塾に通い詰めていた。
そしてそのとき同じクラスで仲が良かったのが要だったんだ。
その頃は要が月島グループの御曹司だなんて知らなくて。
この高校に入ってからそのことを知った。
要はあたしの1番の理解者だ。
お互い、恋愛感情は一切ない。
だって要にはちゃんと心に決めた人がいるんだ。
それにあたしだって要のことは友達としか見ていない。
あたしと要は純粋な友達。
いや…親友と呼べるほどの仲だ。
『家出なんてしてどうするんだ、沙羅。
今から駅に行っても始発までまだ時間あるぞ。
それに駅までの行き方も知らないんだろ?』
ちくしょう。
要にはなんでもお見通しなワケ?
『うちに来い。
しばらくならかくまってやれるから』
要はそう言って車まで歩いて行くと後部座席のドアを開けた。
そしてそのドアの前でニコッと笑う要。
どうやらあたしは要に頼るしか方法がないようだ。
「迷惑かけてごめん」
そう一言言って要の車に乗り込んだ。