偽装婚約~秘密の契約~
『はぁ…
じゃあ聞くがどうして返してくれないんだ?』
わざとらしい溜め息をつき言う。
『まず、第一に沙羅が帰りたいと思ってない』
この月島の言葉に俺は素でショックを受けた。
沙羅は居づらかったんだろうか、ここが。
沙羅にとってここは居心地の悪い場所だったんだろうか。
『それに今のお前に沙羅は任せられない。』
さっきとは違い、真面目な月島の声。
『……どういうことだ?』
爆発しそうな怒りを必死で抑える。
『それくらい自分で考えろ。
その賢い頭でな。
じゃ、電話切るから』
俺が受話器を耳から少し話すと
『あ、そうだ』
なんて声が向こうから聞こえてきて。
俺はまた受話器に耳を当てた。
『今さ、目の前に沙羅がいるんだけど』
月島が1度息を吸い込むのが聞こえてくる。
『沙羅、寝んのに泣いてるよ。
俺が見つけたときもかなり泣いてたのにまだ泣いてるってことは相当辛いことがあったんだろうな。
ま、そんだけ。
じゃ、また学校で。』