偽装婚約~秘密の契約~




プツッと電話が切れた音がしたと同時に俺は受話器を壁に投げつけた。

鈍い音が部屋に響く。



アイツ…ふざけやがって。

俺のこと、おちょくってんのか?


『晴弥様。

沙羅様は…?』


瑞季が遠慮がちに声をかけてくる。



『月島の家にいる。』


ソファに乱暴に座り、また頭を抱える。


『お迎えに行かれないのですか?』


『行けるもんなら今すぐ行くさ。

でも沙羅がうちに帰りたいと思っていないらしい。

それに月島は今の俺に沙羅は任せられだとさ』


自分で口にして腹が立った。


月島要にも

自分自身にも。



『どうなさるのですか?晴弥様』


どうするか、って?


『分からない。

……分かんねぇーよ、んなの!


俺だって…俺だって…どうするべきか誰かに教えてもらいたいんだ…っ!!』


本音が零れた。


そのまま部屋へ逃げ込む。


自分がどうしたいのかも、

自分がどうすればいいのかも、

分からなかった。


そして沙羅が出て行ったこと。

沙羅が泣いていること。


それが俺を追い詰めて。

泣きそうになった。


ダメだな…俺。


沙羅1人に振り回されて

ボロボロになって。


こんなんじゃ、遊馬電器なんて背負えない。


俺、まだまだ未熟だな…










◆晴弥目線 終◆











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