偽装婚約~秘密の契約~
『何…言ってんの?』
予想通りの言葉が返ってくる。
誰だってそうも言いたくなる。
それにあたし自身もまだよく分かってない。
「うん…ごめん」
あたし、よく言われることがある。
洋介の前じゃ乙女になるよね、って。
確かにそうだ。
結構誰に対しても強気のあたしは洋介の前だけ弱気になる。
さっきまであれだけ晴弥に強気だったのに、
洋介にはごめん、なんて言っちゃって。
ちょっと自分でも笑える。
『何があったんだよ?いったい…』
何があった、って言われても…
晴弥のこと、言っちゃおうか。
あ…でも、ダメだ。
契約書にサインしちゃったんだもん。
契約規約には
『この関係を他人に話してはいけない』
と、いう項目があったはずだ。
「親が突然、引っ越すって。
理由はよく分かんないんだけど」
こう濁すしか方法がなかった。