偽装婚約~秘密の契約~
「………分からない」
散々悩んだ結果、やっぱりこれ以外の答えは出せなくて。
晴弥に怒られること覚悟でそう言った。
『………そうか』
意外にもすんなりした晴弥の答え。
あれ…?
怒られずに…すんだ?
『聞いたか?月島。
沙羅は自分が自由になりたいかどうか、分かんないんだってさ。
どういうことか分かるか?』
『…どういうことだよ?』
要が少し苛立ったような声で言う。
『沙羅は自由になりたいとも思うけど、
そうじゃないとも思ってるってことだ。
だからな、月島。
お前の考えは間違ってる。
沙羅は自由になりたい、
さっきお前はそう言ったけど沙羅はきっとそれより強く今のままでいることを望んでるんだ』
心の中を晴弥に見透かされたようで少し、怖かった。
『どうしてだよ、遊馬。
どうしてお前がそこまで言い切れる?
沙羅は確かに分からない、と言った。
でも今のままでいることを強く望んでる、なんて一言も言ってないだろ?』
そう要が言うと晴弥は驚くことを言ってのけた。
『それはな、月島。
俺には分かるんだよ。
沙羅が何を考えて
何を思ってるのか。
それが全て、分かるんだ、この俺にはな。』