偽装婚約~秘密の契約~





『お帰りなさいませ、沙羅様』


結局、こうなっちゃうんだよね…やっぱり。

なんとなく、最初から分かってたよ。


遊馬家からは逃げられない、って。

分かってたんだよ、本当は。


かなりテンション落ち気味に約3日ぶりに遊馬家に帰ってきた。


車の中での会話はいっさいなし。


瑞季さんも森本もいたけど何も話してくれなかったし、

晴弥はずっと無言で窓の外見てるし。


で、気づいたらもう家に着いていた。


なんだかんだ、いつも晴弥の言いなりだな、あたしって。

そんな自分に呆れながら晴弥が何も言い出さないうちに自分の部屋へ逃げ込む。



はぁ…サイアクだよ。

さっきの様子じゃ晴弥、完全に怒ってるし。


ま、当たり前か。

突然、契約終了前にいなくなったんだもんね、あたし。


怒られて当然だってことくらい分かってるけどさ。

でもやっぱり、誰だって怒られるのはイヤでしょ?


ベットへダイブ。

相変わらずフカフカしてる。


そんなことに感動していると



【ギィー】

とドアの開く音がして。


絶対、晴弥だ。

ノックなしで入ってくるのはヤツしかいない。


そう思って仕方なく、体を起こすと



『………良かった』


そんな囁きが耳元で聞こえて。

そして気づくとあたしは晴弥に抱きしめられていた。










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