偽装婚約~秘密の契約~
『………お帰り、沙羅』
……こんなの
こんなの…
あたしの思ってたのと違う。
あたしが想像してたのは、
帰ってくると同時に
晴弥に怒鳴られて
契約書にサインしたんだから
最後まできっちり責任果たせよ
ってそう言われるんだと思ってたのに…
「………はる…や…?」
なのに…いったい、これは何?
まさか夢?
あたし、今夢の中にいる?
そう思って晴弥の腕の中で頬をつまんでみる。
…………痛い。
どうもこれは現実らしい。
だとしたら…晴弥、どうしたの?
なんで?
なんでそんな優しい声で
『お帰り、沙羅』
なんて言うの?