偽装婚約~秘密の契約~





『勝手に…いなくなるなよ』


晴弥の腕に力が入って。


少し苦しかったけどとてもじゃないけど

苦しいから離して!

なんて言える空気じゃなくて。


真っ暗なこの部屋であたしは晴弥の腕の中で黙っているしか方法がなかった。



『どんだけ…俺が心配したと思ってんだよ…』


そんなか細い声…出さないでよ。


雰囲気のせいか、晴弥のせいか

胸の奥がどうしようもなく、痛かった。



『あんな置き手紙1枚残して

無一文のくせに家飛び出したりすんなよ…


もう2度とあんなこと、しないでくれ。

じゃないと俺…』


そこで晴弥の声が途切れる。



「分かった。

もう2度あんなことしない」


そうあたしが宣言したと同時に晴弥がバッとあたしから離れた。



『よし。

言ったな?沙羅。


じゃあそれ、ちゃんと守れよ?

今のしっかり録音させてもらった。

だからこれ、契約の1つとしていれとくから』


暗闇でよく分からなかったがカチッと音がしたと思ったら

あたしの声で


「分かった。

もう2度とあんなことしない」


と声が聞こえてきて。



あの…まさか、晴弥くん?

これを録音するために演技をしていたのですか…??









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