偽装婚約~秘密の契約~




まただ…

また、あたしはヤツのキスによって脳がおかしくなった。


少し長めのそのキスをあたしは受け入れて。

満足そうに微笑んで部屋を出て行くヤツに


「最低ね!」

の一言もかけられずその背中を見送ることしかできない。



やっと立ち上がれるようになったときにはもう



「……………ダメだ、寝よう」


どうしようもない眠気と疲労に襲われて。

ベットに横になったと同時に深い眠りに落ちた。



その日見た夢はきっと、生涯忘れられないだろう。


王子様のような服を着て白馬に乗った晴弥があたしの目の前に現れて。


『沙羅、ずっと俺の隣にいて』

そう耳元で囁いて。


白馬の上で熱いキス。



…………ヒドイわ。

ヤツのキスは夢までも支配するのね。


現実じゃ飽きたらず夢までも…


サイアクだ。

晴弥とキスしたせいで夢の中で


王子様なんて言葉の似合わない

悪魔の晴弥と白馬の上でキス…



あたしの脳はかなりの大部分を晴弥に洗脳されてしまったようだ。



どうか残りの少ない部分だけでも

正常に作動しますように。




そう願わずにはいられないほどに

あたしはだんだんと晴弥によってヤツの色に染められていったのだ…












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