偽装婚約~秘密の契約~
黙って瑞季さんと見つめ合いをしていると
バンッと音がして扉が開いた。
ノック…また、してないし。
そう思いながらも文句を言うのもめんどくさくて。
あたしは扉のところに立っている晴弥を無言で睨む。
『予定が変わった。
明後日出発予定だったが、
明日の早朝の飛行機で向こうへ行く。
瑞季、森本に伝えといてくれ』
『はい』
瑞季さんは晴弥の横を通って部屋を出て行った。
『沙羅』
呼びかけられるがあたしは黙ったまま。
『そんな顔、すんなよ。
せっかくの可愛い顔が台無しだ』
そんな言葉に若干イラッとしたがそれを堪え、睨み続ける。
『はぁ…
まあいい。
そういうことだから、頼んだぞ』
はぁ?
いったい、あたし、何頼まれてるワケ?
そう思いながらもそれを口には出さなかった。
『瑞季はおいてくから、何か困ったことがあれば瑞季に言え。
それと俺の携帯、海外でも使えるから自由に連絡してこい。』
誰があんたになんか連絡するかっ!
と心の中で吠えてみる。
まだ黙っているあたしを困った顔で見た晴弥は
1つ溜め息をつくとあたしに背を向ける。
そして、一言。
こう言った。
『俺がいない間、浮気…すんなよ』