偽装婚約~秘密の契約~
『沙羅は…それでいいのか?』
しばらくの沈黙のあと、要が言った。
「え…?」
『遊馬のこと、スキなんだろ?
それなのに契約が終わったからさようなら、って。
それで…いいのか?』
ジュウゴも、芽依も、要も、みんな同じ目をしていた。
切なげで。
淋しげで。
あたしを気遣ってくれている。
そんな目。
お願い。
そんなふうに見ないで。
泣きそうになるから。
だから…やめてよ。
あたしはその目から逃げるように立ち上がって3人に背を向けた。
でも、今度は瑞季さんまでも同じ目で見てくるから。
あたしは視線を床へと向けた。
「仕方ない…よ。
あたしがどれだけ晴弥を想っても、
晴弥はきっと…あたしのこと、なんとも思ってないんだから」
だから、
ずっとここにいたい。
そう願ったとしても、
それは絶対に叶わない願いだから。
もうやめようよ、この話は。