偽装婚約~秘密の契約~





ただ、そう思ったとしても、やめてくれるはずもなく。

ジュウゴが言った。



『分かんないだろ、そんなこと。

晴弥が沙羅を好きじゃないなんて勝手に決めつけるなよ』


「でも晴弥は…きっとまだ、あずさのことが…」


そこまで言って言葉に詰まった。

これ以上は口に出せない。


言ったら、きっと、泣いてしまうから。



『あずさ様と晴弥様は完全に切れています』

瑞季さんまでもがそんなことを言う。



「どこにその証拠があるんですか…っ


現に、この間晴弥が言ってたでしょ…

俺だって、あずさと一緒なら何も要らない、って思ってたんだ。

って。


そんなに好きだった人を簡単に忘れられるワケ…ないでしょ。

あたしの言ってること…間違ってる?」


さすがに誰も何も言わなかった。

みんな、あたしの意見に同感なんだ。


本気で、恋した人をこんな短期間で忘れられるワケがない。


だから、晴弥はあたしのことを契約相手にしか考えていない。

これは99パーセントの確率で当たってる。


残りの1パーセントは聞かないで。

外れていて欲しい、というあたしの我が儘な願いの分だから。











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