偽装婚約~秘密の契約~




晴弥に会える喜びと

邪険にされるかもしれないという不安を抱えながら車を降りる。



「………大きい、ですね」


縦に長い目の前のビルを見上げる。

さすが世界の遊馬。


ニューヨークにこんなデカデカとした目立つ建物を建てちゃうなんて恐ろしい。



『行きますよ』


瑞季さんの言葉でビルに足を踏み入れる。



受付の女の人はやっぱり外人で。

フロア全体を見渡しても日本人の姿がない。


ここが日本ではないんだと、改めて実感する。


瑞季さんが受付嬢に声をかける。


『Excuse me.(すみません)
Where is Mr.Haruya?(晴弥はどこにいますか)』


相変わらず完璧な発音。

受付嬢はその後何かを言っていたが早口で聞き取れなかった。



『ダメです。今、晴弥様は外出中だそうです。

どうなさりますか?』


どうなさるか、って聞かれても晴弥がいないなら帰るしかないでしょ…

と、思ったので帰りましょう、そう言おうとしたとき、




『………沙羅…さん?』



あたしを呼ぶ声が聞こえた。









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