偽装婚約~秘密の契約~
振り向くと
「……お義父さん」
晴弥のお父さんが立っていた。
『どうしてキミがここにいるんだい?』
「晴弥に…用があって」
前の一件が会った手前、少し気まずい。
あたしはこの人にたてついたんだ。
『わざわざ日本から駆けつけたんだろ?
晴弥は今日、帰りが遅くなるからうちのホテルでゆっくりするといい』
お父さんはそう言って後ろにいた白人の女性に何かを囁く。
『部屋は手配しといた。
それじゃあ、また』
ありがとうございます、そう言って頭を下げて顔を上げたときにはもう背中しか見えなくて。
あの婚約パーティーの日。
あたしは反抗したのに。
それを根になんて持っていなくて。
あんなに親切にしてくれて。
なんて器の大きい人なんだろう、
ただただそれしか頭に浮かばなかった。