偽装婚約~秘密の契約~
「瑞季さんが言うように、あたしは晴弥を変えたかもしれない。
でも。
だとしても、あたしはアイツについて行くことはできない。
今までさんざん、アイツに好き勝手やられました。
未練はないけど、あの頃は大好きだった洋介と別れさせられた。
あのとき、あたしがどれだけ辛かったか、分かりますか?
それに、人をさんざんおちょくって
こっちがその気になったら
突然、本命が現れて。
そんなあたしのキモチ、分かりますか?
あ、そうだ。
やめてくださいよ、瑞季さん。
もう
晴弥様とあずさ様は切れています。
っていうのは聞き飽きたので。
いくら瑞季さんが言っても
あたしは、どうしても信じることができないんです。
確かに、晴弥のもとを去るのは辛い選択です。
まだ契約中ですし。
でも、それでも、これ以上あたしはアイツを好きになっちゃいけないんです…
このキモチを止められるうちに、止めておきたいんです。
今、アイツから離れれば、
このキモチは…大きくなることもなく、きっと…消えて…なくなってしまうから…だから…」
そこまで言って最後は言葉にならなかった。
大粒の涙が突然、溢れてきたからだ。
そして、あたしは突然聞こえたその声に。
耳を、疑った。
『……沙羅…』
「…………………はる、や…」