偽装婚約~秘密の契約~
「晴弥。
契約…終わりにしよう」
最後。
もうこれで終わり。
家まで連れて帰ってくれれば
…いや、そんな贅沢は言わない。
せめて日本に返してくれればいい。
そこで、もう遊馬家との関わりを終わりにしたい。
この秘密は、誰にも言わないって誓うから。
だから、お願い。
晴弥…お願いだからあたしの頼み、受け入れて。
『…………イヤだ』
しばらくの沈黙のあと、
晴弥が静かに呟いた。
『そんなこと…許されると思ってんの?』
晴弥はツカツカとあたしに歩み寄る。
『そんな我が儘…俺に、通ると思ってんの?』
晴弥はそう言ってソファにあたしを押し倒した。
それは一瞬のことで。
拒む隙もなくて。
怖かった。
だけど、それよりも心配だった。
…あまりも晴弥の目が悲しげだったから。