偽装婚約~秘密の契約~
「か、からかうのは…やめてください」
瑞季さんの『俺』は想像以上にカッコ良くて。
そして少しかすれた声はあたしの脳を刺激して。
動揺しているあたしがいた。
『からかってないよ?俺、本気』
やめて…
お願いだから…そんなこと言わないで。
そんなこと言われたら、あたし…瑞季さんに頼っちゃいそうだから。
『沙羅様が遊馬家に来てから俺はずっと、あなたを見ていた。
そして晴弥様の言動に一喜一憂するあなたをいつしか、俺は男として意識するようになっていた。
だから、俺は本気だよ』
「…やめて、瑞季さん」
そう、言っているのに。
それなのに、瑞季さんは続ける。
『俺は、雇われの身だけど。
でも、それでも絶対、沙羅様を泣かせたりしない。
最初は晴弥様の代わりでいいから。
だから…俺にしない?』