偽装婚約~秘密の契約~
瑞季さんの言葉は
ウソ偽りのないように聞こえた。
でも
「ダメですよ…瑞季さん。
そんなこと言わないで。
瑞季さんは瑞季さんだし、
晴弥は晴弥だから…だから、瑞季さんは晴弥にはなれない」
瑞季さんを意識したことがないのか、
そう聞かれればあたしは答えることができない。
だって、こんなにいい人なんだもの。
イケメンとは顔じゃなく、性格がいい人もそう表現するらしい。
だとしたら、瑞季さんは正真正銘の『イケメン』だ。
顔も、性格も『イケメン』
そんな人がいつも傍にいれば意識しない女の子はいないだろう。
でも、あたしが惹かれたのは
瑞季さんじゃない。
横暴だし、
融通は利かないし、
変態だけど。
それでもあたしが好きになったのは晴弥だから。
「瑞季さんの言葉は、すごく嬉しかったです。
そして、これからもあたしの中の瑞季さんの位置づけは
良き相談相手、です。」
自分がヒドイことを言っているのは分かってる。
でも、それでもこれは言葉をにごして、あいまいにしていいことじゃないから。
だから、あえてはっきりと言った。
瑞季さんをそういうふうには見れないんだ、って。
あたしは言い終えると同時に
泣きすぎて真っ赤であろう目を細め、とびきりの笑顔を見せた。