偽装婚約~秘密の契約~
『……羅様…沙羅様。
起床のお時間です』
「………んー?」
まぶたが重い。
あたしは特別、朝が弱いのだ。
『沙羅、早く起きないとキスすんぞ』
突然、ドアップで目の前に晴弥の顔が現れる。
「……や、ヤダ!」
いっきに眠気が拭き飛ぶ。
『そんな俺とキスしたくないのかよ…』
なんて晴弥の呟きは無視。
『おはようございます、沙羅様』
丁寧に頭を下げる瑞季さん。
朝からカッコ良すぎる。
『これが新しい制服でございます。』
瑞季さんはそう言ってあたしに制服を差し出した。
そうだ。
あたし…転校したんだった。
第一、ここはあたしの家じゃないんだ。
そんなことを寝起きの頭の中で考えながら新しい制服に袖を通した。