偽装婚約~秘密の契約~
さよなら
『沙羅様。
帰りは専用ジェットじゃなく、普通の飛行機にしようと思うんですがよろしいですか?』
「あ、はい。
全然いいです!
むしろそのほうが落ち着くんで…」
庶民のあたしにあの自家用ジェットは似合わない。
やっぱり庶民には普通が似合うんだ。
瑞季さんは携帯で誰かに電話をかけ、少し会話をすると電話を切る。
『ファーストクラスを確保できました。』
………ファーストクラス…っ…
遠慮します、と言いかけてやめた。
だってこうして贅沢できるのは今日が最後なんだよ?
だったらやっぱりそこは甘えるしかないでしょう。
「あ、そうだ。
もちろん瑞季さんもファーストクラスですよね?」
『はい。
最後の沙羅様との時間、楽しみたいので』
ホントは執事はファーストクラスに乗っちゃ行けないんですけどね、
瑞季さんはそう言いながら笑っていた。
お茶目だなぁ…瑞季さんってば。
あたしはそんなことを思いながらクスッと笑った。